シニアペットと暮らして

8歳のシニア猫を迎えたお話

ちーちゃん・10歳
公募

著者/あや

8歳の猫のちーくんが、一人暮らしの私の家にやってきた。

当時、私は保護猫に興味があり里親サイトを毎日覗いていた。
最初は保護団体や施設でずっとおうちを探している子を閲覧していたのだが、殆どの募集がお迎え条件に「一人暮らしの方へは譲渡不可」と定められており、残念ながらご縁はなかった。

ある日、「保護猫ではないにしても、困っている猫ちゃんや飼い主さんの力にはなれるのではないか?」と気づき、検索の方法を少し変えてみた。

すると、「引越しのため」「相性が悪いため」「親族介護のため」など、様々なやむを得ない事情で募集を出しているものを多数見つけた。
人間の都合で手放される猫ちゃんが可哀想だと最初は感じていたが、本当は離れたくないのだと長文で思いの丈を綴っている姿を見て、徐々に私なら助けられる、という気持ちに変わった。

そこで出会ったのがちーくん。

ちーくんの飼い主さんは、病気やご家庭の事情で飼育が困難になったと募集していた。
すぐにお見合いの日程が決まり、人見知りと聞いていたが初対面の日にお腹を見せてくれた。その場で連れて帰りたくなった。
綺麗な緑色の目。もふもふとしたキジシロの長毛。可愛らしい高い声。写真で確認はしてたものの、実物はかわいいさが溢れていた。
飼い主さんと会話している中で、今回の募集は本当に苦渋の決断なんだと、強く伝わってきた。8歳のちーくんはシニア猫かつ持病持ちという事もあり、なかなかご縁がなかったとも聞いた。みんな健康な子猫を求めているのだとか。そのような事もあり、ありがたい事にその日のうちに譲渡が決定した。
譲渡とはいっても、私の気持ちとしてはもともとのご縁はそのまま繋いでおきたかったので、いつでもちーくんに会いにきてくださいと何度も伝えた。

数週間後、ちーくんが我が家にお引越ししてきた。
飼い主さんが玄関から出て行くと、ちーくんは玄関を暫く見つめていた。
そのあとは家の中を探検し、ベッドの下から出て来なくなった。
そのまま2日経ったある時、ちーくんはのそのそと動き出した。
ご飯を食べ、お水を飲み、私の膝の上でゴロゴロと甘えてくれた。
シニアでもこんなに甘えん坊なんだと少し驚いたが、それ以上に嬉しくてたまらなかった。
初めての場所で知らない人間と二人きりにされて怖くて不安だっただろうに。
私は初めてちーくんに甘えられて、絶対に何があってもこの子を手放さないと誓った。

2022年9月(10歳)のちー

月日はすぐに流れて、もう一緒に暮らして3年になる。ちーくんは今年で11歳だ。
一緒に寝るのは当たり前。帰ってきたらお迎えをしてくれるし、家の中を移動するとついてくる。朝はかわいいお手手で私の頭を叩いて起こしてくれる。お喋りが上手でいつも何かを言っているが、「あわ?!」と言いながらご飯に駆け寄る姿が一番好きかもしれない。仕事から疲れて帰ってきても、ちーくんが側に居てくれるだけで心が安心する。
猫でいう11歳は人間だと60歳くらいらしい。
年齢のせいか、舌のしまい忘れが多くなった。遊ぶ事も少なくなり、トイレハイもあまりしなくなった。
こう目に見えるような変化があると、「あと何年一緒に居れるだろうか。」そんな事をたまに考えてしまう。
持病の甲状腺機能亢進症もお薬を毎日飲んでくれているが、いつどのような影響が現れるかわからない。油断せず、ちーくんが毎日穏やかに、幸せに、安心して暮らせるように全力を尽くす。

うちにきて2ヶ月経った2020年5月(8歳)のちー

元の飼い主さんとも継続して連絡を取り合い、SNSでちーくんの写真をアップして近状を報告している。たまに「ちーくんには本当に悪いことをした。ごめんね。」と仰るが、「ちーくんを捨てないでくれてありがとう。私とちーくんを出会わせてくれてありがとう」という気持ちしかない。
毎日欠かさず、ゆっくり瞬きをしあって愛情を伝え合っている。