シニアペットと暮らして

私の宝物

ちゃあちゃん・21歳
公募
BOOK掲載

著者/吉澤綾華

21年前の2001年7月21日、運命の出会いをした。中学2年生だった私は、夏休みに部活仲間と花火をする為、港を訪れた。

ちゃあ15才ごろ。毎日の日課のお散歩。季節の花のにおいをかいだり毎日興味津々。

花火の最中、どこからか子猫の鳴き声が聞こえてきた。声の場所を探すと、魚市場の隅に置かれた大きなダンボール箱に辿り着いた。箱の中を見ると生後間もない10センチほどの小さな子猫がちょこんと座っていた。黒と白のハチワレ模様で、私たちに気づくと、短いしっぽをピンと立てて、大きな声で「ニャー」と鳴いて見上げてきた。どうやら捨て猫のようだった。

箱から出してあげると、よちよち歩きで私たちの後をついてきた。所々にある5センチほどの窪みですら小さな体では渡ることができず、窪みを避けながら必死に歩いていた。私は猫を飼ったことがなく、接し方に戸惑ったが、これほど小さい猫をみたこともなかったので、愛おしく感じ、恐る恐る抱いてみた。小さいのに気が強く、歯も生え揃っていない口で私の親指を甘噛みしてきた。 子猫と遊んでいるうちに愛着が湧いてしまい、「飼いたい!」とその場で母に電話をした。母はすぐには了承しなかったが、自分でお世話をするという約束で飼うことを承諾してくれた。

コロンと寝転がって休憩中。近くを通ると手でちょっかいをかけてきます。

この子猫はちゃあと名付けた。落ち着きがなく、活発で、当時の私と似ていたことから、「ち」いさい私の分身という意味で私のあだ名とくっつけて、「ちゃあ」にした。末っ子の私にとって初めてできた弟となった。

ちゃあの性格をいくつかあげてみると、まず綺麗好きで毛づくろいも入念にする。好奇心旺盛で遊ぶことが大好き。ぬいぐるみをくわえて持ってきたり、スーパーの袋を丸めて投げてやるとくわえて持ってきたりする。 ツンデレで、撫でようとすると噛みつこうとしてくるが、風邪で寝込んでいると心配して側に来て手を舐めてくれる。 また、大きな声を出すと「なんだなんだ!」と言わんばかりに全力で駆け寄ってくる野次馬なところがおもしろい。

我が家の中では一番父に懐いており、男同士気が合うのか、朝から晩まで常に一緒に行動している。毎日父と庭の散歩をし、ブラッシングをしてもらい、一緒に寝るために決まった時間に2階の寝室に上がるというルーティンがある。父が時間を守らないと、近くにきて文句をいうなど、規則正しい猫である。

食欲旺盛で若い頃のちゃあは体も大きくふっくらしていて、初めてみる人からも「大きい猫だね」と言われるほどだった。

20才のちゃあ。遊ぶことが大好き。おもちゃも好きですが、スーパーのビニール袋が大好きです。ビニール袋を丸めて投げるとサッカーのように手で転がしてもってきてくれます。

そんなちゃあも2度闘病生活をする。 1度目は6歳の時、腎臓病を患った。雷に怯え、押し入れに長時間隠れてトイレを我慢したことが原因だった。病院では「一生薬を飲むことになる」と言われ、とてもショックだった。薬を飲ませるのも大変だった。錠剤を砕いてフードに混ぜて食べさせようとしたが、見事に薬だけ吐き出し、丸い手で器用にお皿の下や、カーペットの隙間に薬を隠したり、なかなかの知能犯だった。様々な工夫をして薬を飲ませる日々だったが、2匹目の猫を飼いはじめたことで奇跡が起きた。2匹でよく追いかけっこをするなど、運動量が増したからか、刺激的な生活となったからか、理由は不明だが、病気宣告から1年で奇跡的に寛解し主治医も驚いていた。

2度目は、18歳の時、糖尿病と宣告された。 食が細くなり一気に痩せ、毛艶も悪くなり、寝ていることが増え、心配になり病院に連れていったところ病気が判明。その日からちゃあと家族のインスリン注射の戦いが始まった。弱っていても、気の強さは健在で、注射や通院のたびに「シャー」と威嚇してきた。療法食にし、毎日自宅で尿検査をした。多頭飼いなので、食べたご飯の量や夜間カメラでトイレの様子なども確認してノートに記録した。

一時期マイブームだったテント。新しいもの好きな性格なので、購入後すぐに中に入ってくれて愛用していましたが、飽きっぽい性格なので一か月ほどでテント生活は終了しました。

糖尿病は一生の付き合いになると言われていたが、またしても奇跡的に1週間ほどで尿検査の数値がよくなり、1か月ほどで血液検査の数値も正常となり、食欲や元気も取り戻し、寛解と告げられた。2度目の奇跡に主治医も驚いていた。現在も療法食と自宅での尿検査は続けているが、そのほかは以前と変わらない自由な生活を送っている。

ちゃあはこの夏21歳の誕生日をむかえた。体も以前より小さくなり、足も少し弱ってきて、昼寝の時間も長くなってきたが、お気に入りのおもちゃで走り回って遊んだり他の猫のご飯を奪いにいくほど毎日元気に過ごしている。日課の父との散歩もかかさない。階段もしっかりとした足取りで上り、2階の寝室にも毎日一緒に行く。最近の1番の趣味はパソコンで動物の動画を見ることで、21歳になってもまだまだ好奇心旺盛だ。長生きの秘訣は好きなことを好きなだけすることなのかもしれない。

こうして長生きしてそばにいてくれることが本当に幸せでありがたい。弟であり、一番の親友のちゃあ。一緒に過ごせる時間が何よりの宝物。運命の出会いから21年、今日も仲良く幸せに暮らしている。

大好きな父と庭の散歩。ちゃあ21歳(左)と、そら12歳(右)。1年ほど前から、2匹一緒に仲良くお散歩するのが日課になりました。