シニアペットと暮らして

あの日キミに教わった幸せ

ななちゃん・15歳
公募

著者/りな

うちにはツンデレな姫がいます。15歳のチワワ。名前はななです。
私が7歳の頃、私の妹として我が家に迎え入れました。私の名前が“りな”。私の妹なので、名前は“なな”にしようと、父が名付けてくれました。
ななは先住犬の柴犬ギンとミックス犬のチビと共に子ども時代を過ごしました。

1歳頃。ライオンのおもちゃが大好きだった時。

ななは幼い頃やんちゃで、ギンにじゃれに行っては、脚を甘噛みしてギンを困らせたこともありましたが、優しいギンは怒らずいつでも優しく受け止めてくれました。そんなななを叱るのがチビでした。幼くて行き過ぎてしまうななにチビは厳しく接しましたが、歳をとるにつれてチビは丸くなり、ななも大人になって仲良く3匹で散歩に行っていたことが今では懐かしい思い出です。今はななしか残っていませんが、ギンの優しさとチビの厳しさ、ふたつの愛がななを大人にしてくれたんだと思います。
そして、ななには小さい頃から4匹のお友達もいます。会う度お互いヘトヘトになるまで遊び、時にはケンカをしたり。今ではお互い歳をとり、あの頃のように遊ぶことはありませんが、久しぶりに会うとお互い嬉しそうに尻尾を振って再会を喜んでいます。

なな8歳頃。写真右は先住犬のお姉さん、チビ。

先輩であるギンとチビ、4匹のお友達、そして私たち家族からたくさん愛情を受け、色々なことを教えてもらい、経験し育ってきました。
月日が経ち、ななが13歳の頃です。ご飯を食べてくれず、最初は少し具合が悪いのかなと思い様子を見ていたのですが、数日たっても食欲が戻らず明日病院に連れていこうと思っていた時でした。体を休めていたななが起きて、父母私のいるリビングにやってきました。歩き方が辛そうに見え、私が駆け寄った時、ななが嘔吐し倒れました。私はななを抱き寄せましたが、急なことに手が震え涙も止まりません。父も母も驚きを隠せない様子でした。
私は大学3年生になり、学びに行っていた獣医保健看護学の専門的な分野を学んでいる時期でした。ななが目の前で倒れ、私も両親もどうしていいかわからないパニック状態でしたが、大学で日々経験してきたことで何かななに出来ることはないか、自分の経験と知識をフル活用しました。体温や呼吸数等を確認しななの状態を把握、記録していきました。そして電話で相談に乗ってくださる獣医師の方にそれらを詳細に伝え、今自分に出来る対応を伺いました。この日が年末だったことに加え次の日が日曜日だったため、明日病院で診てもらえるのだろうかという不安と、朝までなながもってくれなかったら…という恐怖で夜が明けるまでがとても長く感じたことを覚えています。

今年の15歳のお誕生日。ななはバースデーケーキが早く食べたくて中々じっとしてくれませんでしたが、15歳を元気に迎えられ写真も撮れてとても嬉しかったです。

ようやく朝になり、ホームドクターに電話しましたが休診日だったため診てもらえず、別の病院で初診で診てもらえることになりました。診断は子宮蓄膿症と脱腸。普段脱腸を起こしている場所から子宮蓄膿症を起こしている子宮が飛び出してしまっていると言われました。すぐ手術が必要だと言われましたが、私はななの年齢のことから心臓と体力が心配ですぐに首を縦に振ることが出来ませんでした。ですが、助かる道があるならと父が手術を決断してくれました。
手術が終わるまでずっとお守りを握りしめ祈ることしかできなかった時間もまた、夜のようにとても長く感じました。

0歳からのお友達。会うと大喜びして遊んでいました。

手術が無事終わったと連絡を受け、3人ですぐに向かうと、まだ麻酔が抜けきっていないななは静かに横たわっていましたが、私たちが見えると、目を少し大きく開き、クゥーンと甘えるように鳴き声を出してくれたのです。まだ立ち上がる力などないはずなのに、明日も面会に来るからねと言い帰ろうとすると、慌てて起き上がろうとした姿に先生も驚いていました。その時に思ったんです。ななの生命力と家族の元に帰りたいという思いが勝ってくれたんだと。その力強さに涙が出ました。
倒れた夜、父の腕の中で小さくなって辛そうにしていた表情、術後やっと母の手からご飯を食べてくれた姿、面会の時真っ先に私に頭を擦り寄せてきた温かい感触。
どれも忘れることは出来ませんし、ななの命を救ってくださった先生、入院中管理してくださった動物看護師の方々には感謝してもしきれません。

普段は抱っこがあまり好きじゃないツンなとこと。ななは散歩の後、私の膝の上で腕枕で寝るのが好きです。夜はそばに居てあげないと寝られない甘えん坊なところ。

長く一緒に居すぎて、存在が当たり前だと思ってしまっていました。ですが、あの日、ななを失いそうになって改めて気が付いた日々の幸せ。あの子の存在が私たちにとってどれほど大きいか。先日も元気に15歳の誕生日を迎えられ、年を重ねられる幸せや、一緒に色々な景色を見られることも、何気ない日々や仕草も2度とない幸せなんだと、あの日ななに教えてもらいました。
愛玩動物と言われていたペットは、現代では伴侶動物と言われています。立派な家族なんです。そしてペットは私たちの心に寄り添い、小さな体でいつも、全力で家族を守ってくれる大きな存在なのだと。
これからの一緒に生きていく道のりも一瞬一瞬逃さぬよう、何があっても私もななを全力で愛し守っていこうと思います。