シニアペットと暮らして

今を生きる

ペコ・推定16歳
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著者/中谷訓子

今、私の隣でいびきをかいて寝ているペコばーさん。彼女は推定16歳。ペコはつい先日、肺に転移のガンが見つかり余命宣告を受けました。足腰も弱ってきてはいますがペコ自身は食欲旺盛で散歩も毎日張り切っています!

ペコに出会った頃の写真。よく吠える子でしたが、それは自分の家をしっかり守っていただけで、家から離れると全く吠えない賢い子でした。

私とペコの出会いは2018年の冬でした。事情があり行き場を失ったペコは近所の空家になったアパートの前の小さな小屋で一人で暮らしていました。私たち家族を含め、ペコを気にかけている方は多く、毎日アパートの前を通る度に「おはよー!元気か?」などと声をかける人、手作りの美味しいご飯を持ってきてくれる人、うんちを拾ったり体を拭いたりしてくれる人、そして私は散歩に行ったりご飯をあげたりしていました。そうして構いながらも誰もが「このまま、この子はどうなるんだろう。このままというわけにはいかない」と心のどこかで思っていたと思います。それから少しずつ、散歩がてら我が家へ連れてきたりしているうちに少しずつうちにも慣れてきてくれました。最初、うちでは寝転ぶことはもちろん、座ることすらしなかったのに、段々とおすわりし、横になり、いびきをかいて寝るようにまでなりました。その姿を見てそろそろうちに連れてきても大丈夫かなと思い正式にうちに迎えることにしました。それが2019年の夏でした。

初めてのトリミングの帰り。ペコは最初車が嫌いで頑なに乗るのを拒否していましたが、この日以降、車を嫌がらなくなり今ではドライブが大好きです!この頃から段々優しい目になってきました。

数ヵ月もの間、中途半端に可愛がりこんな状態を続けるのは絶対にダメだと分かっていてもなかなか決断できずにいたのは、私たち家族は犬を飼ったことがない、そしてペコはその時まもなく15歳になる高齢犬。こんな初心者の私たちがいきなり高齢犬を迎えても大丈夫なのかと考えるとやはり簡単には決断はできませんでした。ごめんね、ペコ。随分待たせたね。

こうして我が家の一員となったペコですが、その後も変わらず近所の方はペコを訪ねてきてくれたり、散歩していると知らない人から「ペコちゃん!」と声をかけてもらうこともしょっちゅうで、ペコがたくさんの縁を繋いでくれています。

そんなペコですがうちに来てから今日までずっと病院通いの生活を送っています。
引き取った時に病院で検査をしてもらい、フィラリア強陽性と診断されました。私はフィラリアにかかるともう治らないとその時は思っていましたが先生はいくつかの治療法を提案してくださり、そのうちの一つの「ボルバキア治療法」をすることにしました。その治療法がペコに合ったのか4ヶ月の投薬で見事、フィラリア陰性となりました。涙が出るほど嬉しかったです。頑張ってきちんとお薬を飲んでくれたペコ、彼女の生きようとする力がきっとフィラリアに勝ったんだと思います。
これでもう落ち着いてくれればと心から願いましたが、その後、子宮蓄膿症で緊急手術が必要となり、元々乳がんもあったのでそれも一緒に取ることに。もう高齢なので外科的手術は避けたいと思っていましたが、病気が病気なだけに手術せざるを得ない状況でした。今思えばペコが必死で生きようとしているのに「もうこのまま会えないんじゃないか・・」などと良からぬ事を考え涙した自分を情けなく思います。長い手術を終え、ペコは無事に戻ってきてくれました。本当にぽんこつ飼い主ですがペコはいつも私達よりもずっとずっと強く生きています。今を精一杯生きています。

両親も一緒に散歩へ。ペコは私一人と散歩に行くよりも両親も一緒に散歩に行く方がどことなく嬉しそうにしています。足腰が弱ってきたとは言えペコはこの中で一番元気です!散歩はいつも張り切っています♪

それから間もなく摘出した乳癌が悪性だと分かり、他に転移していないか経過観察していましたが残念ながら肺に転移が見つかりました。これからどうしていくか先生と相談し、もう抗がん剤治療はしないと決めました。高齢のペコにとっては抗がん剤もかなりの負担になること、そして抗がん剤治療をして余命は少し伸ばせても完治することはないのであれば私は今のこの元気な時間を守りたい、抗がん剤の副作用でこの元気な時間までも奪いたくないと思ったからです。この短い期間で命にかかわる決断を何度もしてきてその都度、ペコにバレないようにこっそり涙してきました。大切な誰かの命と向き合うのは本当に辛いことです。正直、なんでペコばっかり。。元気で長生きしたいという願いすら叶えてもらえないのかと思ったりもしました。そして、自分が出した決断が正しいのかも未だに分かりません。でも今横にいるペコばーさんは確かに元気で、晩御飯は何かなぁ?そろそろ散歩かなぁ?とキラキラした目でこっちを見ています。この何気ない日常をできる限りいつも通り過ごさせてあげるのが今私たちにできる事ではないか、そしてペコもそれを望んでいるのではないかと考えました。私たちがペコと過ごしてきた時間は短いですが、その中でも日々「老い」というものを感じ淋しい気持ちになることも多々あります。ですが「老い」を受け入れることがペコと向き合うこと。先の事を考えて悲観するよりも「今」を大切にし、一日一日を過ごしていきたいと思います。
ペコ、本当にうちに来てくれてありがとう。これからもまだまだ美味しくて楽しい毎日送ろうね♪