シニアペットと暮らして

喜びも悲しみも幾年月

ふー・14歳
公募

著者/永田耕作

泣いている人がいれば寄り添い、怒っている人がいればじっと耐える、周りの顔色をよく伺うふーちゃんはクリスマスの日に家へやってきました。
初日からベッドの真ん中に仰向けでスヤスヤと眠る姿を見て、この子は大器だねと皆で感心したものです。トイレも難なく覚え、今まで縁したわんこの中でも一番賢い子だと思います。
シーズーは目が大きいので、特に目のケアには注意しました。
そして人間の食べ物を一切与えなかったからか、幼少期、成犬期と一度も体調を崩すことはありませんでした。シニアになっても白内障にもかからず健康なのが自慢で、このままずっと一緒に過ごせると思っていたのに、あんなに元気だった子も2019年4月、14歳でとうとう病気を患い手術を受けました。乳腺腫瘍です。これがずっと元気に過ごしていた子が弱っていくきっかけとなりました。

発病前、最後に外で元気に走った穏やかな春の日でした。

高齢ながら手術はうまくいきましたが、病理検査をしてもらったところ、悪性腫瘍だったようでリンパ節に初期の転移が見受けられるとの診断。そのためエリザベスカラーを卒業してまた元気になった姿を見ながらも不安が残りましたが、ひとまずは安心していました。
しかし、それから1年ほど経った頃、今度はお腹の張りが気になり病院で診て頂くと、肝臓ガンが発覚。残念ながら手術不可能な領域とのことで今回は治す術がありません。腫瘍と戦う免疫力をつけるためのサプリメントを飲ませてあげることしかできず、どんどん痩せ細りお腹は大きくなっていきました。

手術後約1週間。お顔はハッキリしていますがまだまだしんどい様子。

少しの段差でも戸惑うようになったため玄関にスロープを取り付け、トイレはバリアフリー化。踏ん張る力が弱くなりフローリング上では立っているのが難しくなったので、部屋中にマットを敷き詰めました。
幸い歩く力、指定場所での排泄、食欲は問題なく介護とまで呼ぶような労力はまだ必要ありませんが、軟便や下痢が多くなったため漢方薬を飲ませて排泄日誌を書いています。
ご飯はドライフードに缶詰めを混ぜて与えます。水をよく飲むので水分を摂りすぎないよう、ドライフードはふやかさずに砕いてあげれば軟便も落ち着きました。

肝臓に腫瘍が出来てからは寝てばかり。もう走ることが出来ません。

歩く力はあれどもヨロヨロとして、もう大好きなボールを追いかける元気がない…そんな様子を見ていると妹分のもみじちゃんと散歩で元気にかけていた日々がまるで遠い日であるかのよう。耳はすっかり遠くなりましたが目がちゃんと見えていることがせめてもの救いで、時々ヨロけながらも自宅警備員としてあちこちの部屋を見てまわる、夜の室内点検は欠かさず行う頼もしい子です。

病気になっても、女の子なのでお手入れは最後まで欠かせません。

いよいよ寝てばかりいるようになったのはここ最近で、呼吸は荒く、お腹はいつも燃えるように熱く、ちゃんと呼吸しているかどうか常に確認しては胸を撫で下ろす毎日。
病院の先生いわく、あのような病理診断結果を受けた子で1年以上持ちこたえたケースは見たことがないとのことですが、手術してから1年半、命の炎はまだ奇跡的に生き続けています。
いつかやってくるお別れの日を想像するのは辛いですが、カウントダウンに恐怖を抱くよりも生きる力に感謝して、常にふーちゃん優先の「ふーファースト」で過ごすことが、この子のためになると思っています。不治の病により拭うことができない痛み苦しみがある分、出来る限りの癒しを与えてあげることが私達の使命です。