シニアペットと暮らして

ぱぴとの時間

ぱぴちゃん・13歳
寄稿
BOOK掲載

著者/谷本雅世

幼い頃から生き物が大好きで虫から子犬、子猫まで拾い育てましたが、保護しても衰弱して亡くなる子もいたり、幼少時より生命の大切さを学んだ気がします。
最初に飼った犬は初冬の公園で拾った目が開いたばかりの雑種の赤ちゃん犬で、人間の哺乳瓶で牛乳を与えて育て19歳の老犬になるまで共に暮らし、生涯を実家で全うしました。

我が家に来たばかりのぱぴ(生後40日)

ぱぴを飼うきっかけは子供の頃デパート屋上のペット売場でふれた垂れ耳三毛ビーグルの子犬です。いつか本物のスヌーピー(ビーグル犬がモデル)と生活するのが夢でした。
結婚した時、念願の骨太でおっとりした生後1ヶ月位の子犬を迎えました。オスワリ、オテ、フセ、マテ、トイレ等すぐ覚えた利口なぱぴは、全然寝ずに1日20時間位パワー全開の、何でもかじる破壊王でこわがりな子犬でした。不安で外では用が足せず、どこへ行くにもトイレトレー必携、水が怖く飲まないので苦労しました。家に来た時点でケンネルコフにかかっていたり、生涯を通じ病院通いの犬生。生まれつき食物アレルギーとアトピーが持病でした。幸いぱぴは、近所のかかりつけ獣医の寺門先生が大好きで生涯お世話になりましたが、いつも喜んで病院に行き、診察台の上でもブンブンにしっぽを振って甘え、先生を苦笑させていました。

ぱぴ6歳靴下を引っ張りっこ

ぱぴの場合、同じフードを続けて食べさせると痒くなり、比較的低アレルギーのチキン、ラム、米なども長期間与えると痒みが出てNGに。ただしおなかを壊すことは全くなし。生涯OKだったのは魚類と鹿・カンガルーなどレアな肉類を使った食べ物でした。ぱぴが体を掻くと叱ってばかりいたので「痒いのに、掻いたらどうしてダメなの?なぜ怒るの?」とぱぴは感じて、相当辛かったと思います。でも陽気な性格で素直にすくすく育ち、痒みが出ぬよう私たちも色々考え、皮膚の掻き傷予防に服を着せる事を慣れさせました。特にオールインワン・タイプは有効でした。

ぱぴ12歳闘病中も元気にお花見に出かけました

3歳の頃、ぱぴに犬生最初の試練がきました。チャームポイントの垂れ耳に直径3mmほどの硬いしこりが見つかり生検した所、悪性の脂肪細胞腫=がんで「ステージ4」の診断でした。直ちに切除手術が必要と言われ、深刻に思ってなかった私たち夫婦は、突然襲ってきた現実に恐怖で足がすくみ、目の前が真っ暗になる思いでした。幸い保険に加入していたので、費用面も躊躇する事なく手術を受けさせ無事成功。転移・再発もなく完治しました。初期段階で異常を発見して下さった先生には感謝の想いしかありません。掻いたり頭を振るなど些細なサインにも気づいてあげること、人間より早いスピードで生きる犬には飼い主の観察と迅速な対応が大切だと痛感した出来事です。

ぱぴ9歳犬OKの高山鍾乳洞見学後のキュウリ

アトピーが悪化せぬようその後もリンゴ、芋、野菜などOKな食べ物もローテーションを組みバリエーション豊富に与える工夫を続けました。ぱぴの体質に合った刺激の少ないシャンプー探しや散歩後の足洗いも実践し、体や耳内を汚れた足で掻かぬようにさせました。その甲斐あってか症状は徐々に改善され10歳を過ぎてからはおだやかな犬になりました。私たちはシニア犬になったぱぴとの時間の方が、子犬の頃より心が通い合い充実していたと実感しています。

ぱぴ10歳ハロウィン衣装でおやつを鼻パク

2つめの試練は7歳の時、右目が白内障になった事。若い頃からサプリ等で予防してきたつもりが遺伝もあってか症状が短期で急速に進み、動物眼科専門医の診察を受け、ぱぴの場合は手術しても完全に元には戻らないでしょう、また掻きグセがあるので術後のリスクが大きく(手術する事自体)難しいでしょう、と診断されたのです。悩みましたが最終的に手術しないで定期検査と目薬でケアし続ける事を選びました。「見えなくても鼻が利くから大丈夫、ウマウマは見つけられるからね。

看板犬ぱぴ11歳XmasソングCDを紹介しています

痛い思いするより、ぶつけないようパパ・ママ、私のサポートよろしくね!」とぱぴも理解してくれてたと思います。実際驚く事に生涯ぶつけることもほとんどなく、亡くなる直前まで暗闇でも上手に颯爽と歩けていました。親バカと言われそうですが、そんなふうに頑張るぱぴを誇りに思い、私たちの活動にPaPiTaMuSiCaと名を冠しロゴマークを作り、以来どこへ行くにも一緒、車ごとフェリーに乗って遠くへ出張旅行もしました。SNSで写真を公表すると海外からもPaPiTaは声援をもらえ、空に旅立った今もアイコンとして活躍しています。

PaPiTaMuSiCaのロゴマーク
バンドネオンを弾くぱぴ
(なぐぁ@nagaaaさん画)

2018年冬、最大の試練がぱぴを襲いました。深夜突然全身を震わせ不調を訴え、精密検査した所、結果は悪性リンパ腫。先の見えない闘病生活が始まりました。
毎月1回の抗がん剤投与と毎週1回の検査を何ヶ月も続ける治療をおっくうがる事はあっても決して嫌がらず、時に驚くような回復力で、一緒にいる私たちさえ病気である事を忘れるほどの復活ぶりを何度も見せてくれたのです。犬って凄いと感動しました。

ぱぴ13歳大好物なアトムヘルスラボさんのベジ葛クッキーを鼻パクするよ。(注:アレルギー予防にもなる葛が入った野菜クッキー)

しかし病魔は静かに忍び寄り、2019年節分の夜、大きな深呼吸をしてぱぴは13年の生涯を終えました。直前まで懸命に戦い、いつも全力投球でよく食べ寝て散歩して弱い所を極力見せぬよう笑顔でした。犬とはそんなふうに頑張ってくれる尊い生き物なんですね。病気で辛そうだったのは最後のたった3日間ほど。居てくれるだけでうれしくて看護も苦ではなかった。夫と二人背中をさすり続けた時間は永遠に続いてほしかったし、一緒にいた時間は私たちの財産です。「いつかまた会えるのを楽しみにしているよ。もう少しだけお空で待っててね」と空を見上げて今日も一日が始まります。かけがえのない私たちの大切な宝物ぱぴ。うちに来てくれてありがとう♪