シニアペットと暮らして

レオと生きる幸せ

レオちゃん・16歳
公募
BOOK掲載

著者/水紀

令和元年の夏に16歳を迎えた愛犬、ミニチュアダックスフンドのレオ。体重7キロという規格外の大きさと、クルクルのクセ毛がチャームポイントの男の子。
自力で起き上がることができず、ゴハンもあまり食べられなくなったいま、日々を穏やかに過ごしています。
レオは私が7歳のときに我が家へやってきました。

うちに来たばかりの頃

母に連れられて子犬を見に行ったあの日、たくさんの兄弟犬たちの中から、よちよちと一番に私のところに歩いてきたのがレオでした。私は迷わず「この子にする!」とレオを離さなかったことをよく覚えています。
それから毎日、私の通学路である家とバス停をつなぐ道のりがレオのお散歩コースになりました。朝はバスを追いかけて一緒にバス停まで走り、帰りは私が降車するとすぐにしっぽを振って駆け寄ってきてくれました。私が中学校に進学してバスを使わなくなった後も、母とお散歩をするときはバス停で私のことを待とうとしていたそうです。
そんなレオは、一人っ子の私にとってたったひとりの大切な弟です。
いつも一緒にいるのが当たり前で、いつかは死んでしまうとわかっていても、本当にいなくなる日が来るなんて少しも実感がありませんでした。
しかし13歳を過ぎた頃から、心臓の弁が逆流していることがわかったり、白内障が発症したり、肝臓や腎臓の数値が悪くなったり、次々と現実を突き付けられました。あんなに大好きだったゴハンも、食べられない日がでてくるようになりました。

母の実家である和歌山の河原でお散歩

そうしてやっと私は、「レオと一緒にいられることは当たり前じゃない」と気が付いたのです。
レオがシニアになってからの最高の選択は、犬用のベビーカーを買ったことです。
老化で足腰が弱り、体力も衰え、以前のように長い距離を歩くことは難しい。そんなレオとの外出は家の周りのお散歩だけで、お出かけとはほとんど疎遠になっていました。
しかし、それが一変。レオのペースで歩いていたらとても日が暮れてしまうような公園の散歩コースも、ベビーカーがあれば行くことができるようになりました。ある程度のところまでベビーカーで移動して、好きなところだけ少し歩かせて、疲れたらまた乗せてあげればいいのです。

ベビーカーに乗ってお花見。

レオもベビーカーからの景色が気に入ったようで、いつもクンクンと風の匂いを嗅ぎながら得意げな顔しています。
それからというもの、ベビーカーを使っていろんなところにお出かけをするようになりました。
新鮮な場所や匂いに刺激されたのか、以前よりも若返ったようにすら感じました。
正直なところ、最初はレオの老化を受け入れられませんでした。
あと少しでお別れかもしれないと思ったら、涙があふれて止まらないのです。どんどんできなくなることばかりで、若かった元気なころを思い出すと胸が苦しくてたまらない。
でも、そんな私を変えてくれたのはいつも前向きなレオの姿でした。

雪の日、母とレオ。

目がほとんど見えなくなっても、走れなくなっても、落ち込んでいる様子など少しもありません。転んでも何事もなかったかのように立ち上がり、またすぐに歩き出す。
どんなときでもレオは堂々と、明るく生きているのです。
それを見て、私が悲しんでばかりいてはいけないと思いました。「今を生きるレオにとって、毎日を最高に幸せな日にしてあげよう」と。
そう考えるようになってから、レオと過ごす日々がさらに愛おしく、かけがえのない時間となりました。
犬も人も、大切な家族と過ごせることは決して当たり前ではないし、いつかは終わりが来てしまう。だから、一緒にいられる一日一日こそが、この上なく幸せな時間なのです。
そんな人生で一番大事なことを私におしえてくれて、ありがとう。
レオとの間に残された最後の時間を大切に過ごそうと思います。レオと出会えた幸せを、胸いっぱいに感じながら。

伊豆旅行での一枚